※このコラムは特定の人物を誹謗中傷するものでも、また擁護するものでもありません。あくまで自分の考えを垂れ流しているだけです。
※誤解を防ぐために、この文章中で使っている二つの用語は以下の意味合いで使用しています。
・アンチカード:ある特定のデッキに対して絶大な効果を発揮し、ゲームの勝率を上げうるカード。
・環境デッキ:この文章中では、明確なアンチカードが存在するもののメタゲーム中に存在しているデッキのことを指しています。

 アンチカードを採用したデッキが多いのに、依然として環境デッキとして残り続けているデッキも、今のポケモンカードだと当然存在しますよね。例を出すと、Mレックウザデッキへの明確なアンチカードの一枚として「ウソッキー」が挙げられますし、夜の行進デッキに対しては「オドリドリ」が挙げられます。どちらもそのデッキタイプにとっては脅威的であるだけでなく、これらのカードは一枚入れるだけで劇的に環境デッキへの勝率を上げることができました。 なので、この度のチャンピオンズリーグで入賞しているデッキを見てもこの二枚を採用しているデッキがちらほらあります。今回私が面白いと思ったのは、これらのカードを採用したデッキと同じように、さも当然のごとくアンチカードを採用し一見「簡単に」メタれるような環境デッキが上位入賞しているケースがあります。しかもその数は少なくないです。他のデッキたちは(あるいはミラーマッチを想定していたとしても)そのデッキへの対策を簡単に講じることができたはずなのに、なぜ環境デッキは上位入賞できたのでしょうか。

 理由の一つとして考えられるのは、そもそもそれらの環境デッキがメタゲームに存在しないと考えアンチカードを採用しなかったという点が挙げられます。特に2月に行われた大阪大会や、4月に行われた宮城大会は、メタゲームについての情報が乏しく、どのようなデッキタイプが多いのか非常に読みづらい状況にありました。その中で多くのプレーヤーが下した決断は、「特定のデッキにしか有用に働かないアンチカードを入れるよりも、デッキパワーを上げるためにデッキの枠を割こう」というものだったかもしれません。アンチカードがなければ環境デッキは爆発的な強さを持っており、多くのプレーヤーがそれらのメタゲームの状況を読み切れずに環境デッキに蹂躙されてしまったということは考えうることかと思います。しかし、当然ですがこの考察は5月の大型大会時にはそこまで大きな意味を持ちません。大会ごとのスパンが一週間であり、正確な分布まではともかくある程度メタゲームを把握することができるかと思います。まったくメタゲームについて情報のなかった愛知大会と比べて、今週末行われる大阪大会についてはおそらく「ルガルガン」と「ボルケガメス」の二つのデッキをマークしているプレーヤーは多くなったかと思いますが、それは結果を残したデッキが公式非公式問わず情報共有されているからです。つまり、程度の差はあれどメタゲームへの理解は大会が重なればそれだけ多くなり、アンチカードを採用するかどうかについてもより精度の高い検討ができると思います。

 それでは、「メタゲームを読み違えてアンチカードを採用しないデッキが多かったため、環境デッキが結果を残した」という以外に環境デッキが勝ち続ける要因は何なのでしょうか。つまり、アンチカードを採用しているデッキにもなお、それを乗り越えて環境デッキが勝つためには何が必要なのでしょうか。あるいは、アンチカードを採用したからといって、環境デッキに100パーセント勝てるとあぐらをかいていいのでしょうか。
 これは環境デッキをトーナメントで使う側ではなく、あくまでアンチカードを採用することの多い人間からの一意見ですが、「アンチカードを積むことは、そのデッキへの勝率を『それなりに』上げる行為だと認識するべきである。」と考えています。それなりに、というのを数値で言い表せないのがなんともどかしいですが、自分自身で多くのデッキを組んで見ている方ならなんとなく共感できる部分もあると思います。
 極端な例を挙げましょう。トーナメント毎回上位のトッププレーヤーのAさんと、はじめたばかりのBさんがゲームをします。Aさんは環境デッキを、Bさんは別のトーナメントプレーヤーであるCさんに環境デッキへのアンチカードを入れたデッキを借りてプレイした状況を考えます。さて、皆さんに質問です。どちらのプレーヤーが勝つでしょうか
 結局のところ、アンチカードが極端な実力差を埋められるほど強力なカードではなさそうであるというのが以上のシミュレーションをしていただければわかると思います。それでは、なぜ効果的なアンチカードを入れているはずのBさんはAさんに負けてしまうのでしょうか。もちろん、サイド落ちや事故等の運の要素によってBさんが負ける、ということもありえますが、Aさんは当然「アンチカードのアンチ」を行っていると考えられます。つまり、誰の目に見ても明らかなアンチカードがあってなお環境デッキをトーナメントで握るという選択をする際、構築とプレイングの両面から、いかにそのアンチカードを打破するか、に最も多くの時間の練習を割くと考えられます。環境デッキは基本的な爆発力等デッキパワーの高さは折り紙付きですし、また一枚の明確なアンチカードが存在する場合は特に、動きが定式化しているデッキであることが多いと考えられます。アンチカードは、その本来の定式化された動きを封じてくるカードなわけです。アンチカードを乗り越えてなおそれらの環境デッキが結果を残しているのは、デッキレシピという見える部分の裏で、その人が行ったであろうシチュエーションパターンの処理の練習量を考えると、ただただすごいなと思うばかりです。

 また、上のBさんの行動に「ん?」と思った方もいるかもしれません。「人のデッキを借りてプレイしたらそりゃ使い方もわからんやろ」と。その通りです。そして今のポケカではこの現象がかなりの割合で起こっています。僕は入賞したレシピをそのまま大会に持ってくる人に対して特に何も思いませんが、特に人のデッキを参考にする際は、「なぜこのカードが採用されているか」にとどまらず、「じゃあこういったシチュエーションはどのようにすればいいのだろうか」と、一歩踏み込んで考えてみることが大事なんじゃないかなと思います。特にアンチカードを使わなければ勝てないような環境デッキとのマッチは、アンチカードを使用する効果的なタイミングであったり、それによって遅れてしまう展開をどこでどうやって取り返せるかをシミュレーションしておかないと、あっさり環境デッキに負けてしまいます。なぜなら、先に見たように、環境デッキをトーナメントで使用する人はアンチカードをどうやって乗り越えるかをしっかりと考えているからです。

 アンチカードを有効に働かせるためには、当然ですがアンチカードを積むだけではなく、想定している環境デッキとの練習が必要不可欠です。また、明確なアンチカードが存在するデッキも、アンチカードがあるからそれの入ってるデッキをすべてあきらめるのではなく、アンチカードとどのように付き合っていくかが重要であり、そのシミュレーションを行った結果次第でのデッキチョイスを行うべきなのではないか、というのが個人的な見解です。

コメント

nophoto
こうパパ
2017年5月25日18:24

面白い内容でした。

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